「湯葉とは何か?」と聞かれたとき、簡単に答えられますか?
湯葉とは何か、なんとなくは知っていても詳しくは説明できないという方も多いのではないでしょうか。
実は、作り方や栄養素、食べ方、歴史的背景など、湯葉にまつわる興味深い情報はたくさんあるのです。
こちらの記事では、簡単に「湯葉とは何か」について概要をまとめました。お読みいただくことで、湯葉への関心を深めていただけたら幸いです。
湯葉とは簡単に何かを解説!
湯葉とは簡単にいうと、大豆食品のひとつで「豆乳を加熱したときにできる上澄み」。材料は大豆と水のみ。そして職人の熟練の技術が必要です。豆乳表面のたんぱく質や脂質を主とする成分が熱凝固することで生み出されます。
湯葉の作り方
豆乳からつくられるものには豆腐と湯葉があります。豆腐は凝固させるためににがりや凝固剤を使用しますが、湯葉は使用せず、豆乳を煮詰めて作ります。
湯葉の作り方は次のとおり。
- 大豆を一晩(季節によって時間の差あり)水に浸して柔らかくして擦りつぶします
- 1を煮ます
- 濾過して豆乳とおからに分けます
- 豆乳を仕切り枠をはめた平鍋に入れ加熱します
- 表面にできた薄い膜を竹串で静かに引き上げます
この工程を複数回繰り返して作るのが湯葉。最初にひきあげたものが上等品といわれています。最初と最後では味や風味、含まれる栄養が違います。
湯葉の栄養
湯葉は栄養が豊富で、湯葉の主な成分はたんぱく質と脂質です。たんぱく質には体を作り動脈硬化予防の働き、脂質には美肌づくりや記憶力向上の働きなどがあります。
ほかの大豆食品同様、湯葉にもイソフラボンや食物繊維が豊富。イソフラボンにはホルモンバランスの調整や骨粗鬆症予防、食物繊維には腸内環境改善の働きが期待されるなど、さまざまな健康効果があります。
特筆すべき湯葉の特徴として、同重量の木綿豆腐に比べて湯葉のほうがさまざまな栄養成分が豊富だということ。
特に、鉄分や亜鉛が豊富です。また、生湯葉より乾燥湯葉のほうが栄養が濃縮されて含まれています。
木綿豆腐、生湯葉、乾燥湯葉100gあたりの成分比較はこちら。乾燥湯葉の栄養が非常に高いことがわかりますね。
エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | 食物繊維 | 鉄分 | カリウム | 亜鉛 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
生湯葉 | 218 | 21.8 | 13.7 | 0.8 | 3.6 | 290 | 2.2 |
乾燥湯葉 | 485 | 50.4 | 32.1 | 3.0 | 8.3 | 840 | 4.9 |
木綿豆腐 | 73 | 7.0 | 4.9 | 1.1 | 1.5 | 110 | 0.6 |
湯葉は豆腐に次いで消化がよいのも利点です。体調が悪いときなどに積極的に湯葉を取り入れていくといいですね。
大豆食品 | 消化率 |
---|---|
豆腐 | 95% |
湯葉 | 93% |
納豆 | 85% |
きな粉 | 83% |
煮豆 | 65% |
煎り豆 | 60% |
参考:丸ごと小泉武夫食マガジン|日本人の知恵が生んだ大豆六大食品2
湯葉の種類
湯葉は、大きく分けて生湯葉と乾燥湯葉の2つに分類されます。
- 生湯葉(引き上げ湯葉、すくいゆば、たぐりゆばなどともいう)
-
なめらかで口当たりがよく人気があります。
生湯葉の1つ手前の段階でとるのが汲み上げ湯葉やつまみ湯葉といわれており、生湯葉の中で最上級とされています。
とろとろとした食感で甘みや旨みが強いのが特徴です。
- 乾燥湯葉(干し湯葉ともいう)
-
生湯葉を乾かしたのが乾燥湯葉。乾燥湯葉は時間も手間もかかります。生湯葉を作ってからさらに2日かけて完成させます。
京都の伝統的な湯葉といえば、こちらの乾燥湯葉。シート状に乾燥させたものは平ゆば、巻いた物は小巻湯葉などといいます。
乾燥させて保存性を高めたもので、旨みや栄養が濃縮されています。常備でき、水戻しで5~10分、湯戻しで2~3分程度で使用できるため、便利ですね。あたたかい汁物ならそのまま加えても構いません。栄養を逃すことなく摂取できますよ。
湯葉の食べ方・おすすめレシピ
湯葉の食べ方を、生湯葉・乾燥湯葉それぞれでご紹介します。
生湯葉は、大豆のほのかな甘みや旨みが味わえるよう、シンプルにいただくのがおすすめです。
- 刺身・・・湯葉をお好みの大きさにカットし、わさび醤油またはしょうが醤油少々をつけていただきます
- しゃぶしゃぶ・・・鍋出汁にお肉や野菜、きのこなどを入れ火を通し、最後に湯葉をさっとくぐらせていただきます
乾燥湯葉は旨みや栄養が凝縮されているため、汁物や煮物に入れ、余すところなくいただくのがおすすめです。
- 汁物・・・お椀の底に乾燥湯葉を入れ、だし汁を注ぎ入れていただきます。お好みで三つ葉などを加えます
- 煮物・・・えびや白身魚のすり身を湯葉で巻き、薄い味付けのだし汁で煮ていただきます
- 揚げ物・・・ゆばを広げて素揚げし、好みの大きさにカットしてサラダなどのトッピングにしていただきます
湯葉は表面積が大きいため味つけしやすく、他の素材ともよく合う食品。使い勝手がよくさまざまな料理に使えますよ。
そんな湯葉の歴史は京都から
湯葉の発祥地は中国とされ、中国から仏教とともに僧侶によって日本に湯葉が持ち込まれたといわれています。
京都には寺院が多く精進料理の需要があったことから、湯葉は貴重なたんぱく源として重宝されました。
また、京都は豊かな地下水に恵まれており、良質の水源を必要とする湯葉の製造に向いていました。
京都で茶の湯とともに発展した懐石料理においても湯葉は欠かせないものであり、大きくこれらの理由により、湯葉は京都で発展していきました。
湯葉の発祥地や歴史については、詳しくはこちらの記事にまとめています。
湯葉の由来
もともと湯葉は「ゆば」ではなく「うば」と呼ばれていました。奈良の茶人が描いた資料『松屋(久政)茶会記』(天正15年・西暦1587年)に「うば」と記されていたのが、湯葉に関する最も古い文献だといわれています。
「うば」と呼ばれた理由には2説あります。
- 豆乳を煮るときの皮膜がしわだらけの顔に似ているという由来から「姥(うば)」という説
- 豆乳の上物(うはもの)の「うは」から「うば」となった説
18世紀中頃から後半にかけて、徐々に「うば」から「ゆば」へと表記が変わっていきました。「ゆば」の最も古い文献は、『料理歌仙の組糸』(1748年)だといわれています。
ちなみに、「ゆば」の漢字表記については、現在も地域によって異なります。「ゆば」は京都では漢字で「湯葉」と書き、日光(栃木)では「湯波」と書くのです。
参考:川上行蔵著「つれづれ日本食物史」第三巻、東京美術、1995、p8~12
東武鉄道|日光のゆばは「湯波」と書く! 名物ゆばの楽しみ方と名店ガイド
湯葉とは何かのまとめ
湯葉とは簡単に何かを説明してきました。要点は次の通りです。
- 湯葉とは、豆乳を加熱したときにできる表面の膜
- 精進料理や懐石料理の需要があり水資源が豊富な京都の歴史とともに発展してきた食品
- ヘルシーで栄養価が高く、おいしく使い勝手のよい大豆食品
湯葉が家にあると、料理の食材に足せたりあと一品を作れたりと何かと便利です。ヘルシーで栄養豊富な上に、味もおいしく、簡単に料理できる湯葉。ぜひこれからの日常に、湯葉を積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。