栄養豊富な大豆から作られる大豆油。積極的に摂取した方がいいのか気になっていませんか?
自分自身や家族の健康を気遣う方、体づくりをしている方やダイエット中の方は、摂取する油にこだわることでしょう。
こちらの記事では、大豆油が一部でなぜ危険と言われているのか、その理由や大豆油のよい点について説明していきます。
どうぞ最後までお読みいただき、大豆油に関する正しい知識を身につけ、日常に取り入れていってくださいね。
そもそも大豆油とは?
大豆油とは、大豆の種子から抽出された油です。特徴は以下の通り。
- 世界中で広く使用されている。
- 大豆は世界中で生産量が豊富なため、手頃な価格帯の油。
- 菜種油(キャノーラ油)やパーム油といった他の植物油とブレンドされ、「サラダ油」「天ぷら油」などとして利用されることが多い。
- 食用油としてだけでなく、マヨネーズやマーガリンなどにも加工され流通している。
- コクがあり、くせや臭いが強くないため、揚げ物によく使われる。
- 酸化しやすいため、開封後は早く使い切ることが望ましい。
そもそも、食用油脂とは大きくふたつに分けられます。
- 常温で固体状の「脂」(バター、ラード、ココナッツオイルなど)・・・飽和脂肪酸に分類
- 常温で液体状の「油」(大豆油、菜種油、オリーブ油など)・・・不飽和脂肪酸に分類
大豆油は、食用油脂のうちの「油」に当てはまるということですね。
「油」は不飽和脂肪酸に分類され、植物や魚に含まれます。体内で作り出させない「必須アミノ酸」で、代表的なものは次の通り。
- オメガ9脂肪酸(オレイン酸)が多い油
-
菜種油、こめ油、オリーブ油などに多く含まれます。
悪玉コレステロール値だけを下げ、高血圧予防、便秘予防などに効果があります。
- オメガ6脂肪酸(リノール酸)が多い油
-
大豆油、ごま油などに多く含まれます。
血中コレステロール値を下げる効果があります(ただし、善玉コレステロールを減少させる可能性もあるといわれます)。
不足すると皮膚障害を起こします。摂りすぎると免疫機能に支障を生じたり、アレルギーを引き起こすリスクが生じます。
- オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)が多い油
-
亜麻仁油、しそ油、えごま油などに多く含まれます。
発がん抑制やアレルギー症状に効果があります。血栓予防など生活習慣病を予防します。
大豆油に含まれる脂肪酸の割合は下記の通りです。
オレイン酸 | リノール酸 | α-リノレン酸 |
---|---|---|
23.0% | 54.5% | 6.9% |
油それぞれに特徴があるため、特徴を理解し上手に使い分けることが大切です。オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸の摂取比率は2:1程度が望ましいとされています。
参考:第一薬品工業株式会社 |体に良い油、悪い油 ② – 健康情報
J-オイルミルズ|代表的な植物油の種類
大豆油が危険と言われる理由はなぜ?
大豆油が危険、大豆油は体に悪い、と言われることがあります。なぜでしょうか。
3つの理由を説明します。
大豆油が一部で危険と言われる理由3つ
大豆油には次の3つのリスクが警鐘されています。
トランス脂肪酸を含んでいる
トランス脂肪酸とは脂質を構成する脂肪酸の一種で、天然に存在するものと人工的に作られたものがあります。このうち、人工的に作られたトランス脂肪酸が、心血管疾患のリスクを高めると危険視されるもの。
大豆油は「溶剤抽出法」という製法で作られます。大豆には油分が少なく圧搾法による搾油が難しいためです。「溶剤抽出法」では、大豆に化学溶剤「ノルマルヘキサン」を加えて油脂を溶かしだし、大豆油を抽出。この製法の工程で高温加熱処理がされることで、トランス脂肪酸が生成されるのです。
また、大豆油は酸化安定性の向上のため、油に水素を添加することがあります。水素添加の段階でもトランス脂肪酸が生成されるのです。
このトランス脂肪酸の存在が体に悪いという言われ方につながっているのですね。
しかし、他の油でも高温加熱処理の工程をふむ油であれば、トランス脂肪酸は生成されており、大豆油だけが特段悪い油というわけではありません。
また、大豆油の中でも「低温圧搾法」で作られた大豆油は、トランス脂肪酸のリスクはありません。トランス脂肪酸が気になる方は「低温圧搾法」の大豆油を使用したらいいというわけですね。
海外ではトランス脂肪酸の規制が進んでおり、アメリカでは2018年にトランス脂肪酸の食品への使用が原則禁止されましたが、日本ではまだ禁止されていません。
日本人の平均的なトランス脂肪酸摂取量は1g/日に満たないとされ、もともとが健康への影響は少ないレベルとされていることによります。
参考:農林水産省|すぐにわかるトランス脂肪酸
一般社団法人 日本植物油協会|用語集
遺伝子組換え大豆を使用している可能性が高い
大豆の日本の自給率は7%(平成29年:農林水産省による)と低く、ほとんどを海外産大豆に頼っていますが、輸入される農作物の9割程度が遺伝子組換えであると推測されています。
遺伝子組換え大豆には、生産性を上げ収穫量を増やすというメリットがあります。
一方、現時点では遺伝子組換え大豆の人体への影響について安全性が十分に裏付けられておらず、懸念する声があります。
気になる方は、遺伝子組換えでない大豆を使用した大豆油を選びましょう。表示されていますので、確認して購入することが可能ですよ。
オメガ6脂肪酸が豊富に含まれる
大豆油には、オメガ6脂肪酸であるリノ-ル酸が多く含まれています。オメガ6脂肪酸は必須脂肪酸であり、体内で生成されないため、食品から摂取する必要があります。
オメガ6脂肪酸を摂りすぎると
- 免疫機能に支障が生じる
- アレルギーを引き起こす
- 脳へ悪い影響を及ぼす
- 悪玉コレステロール(LDL)値だけでなく善玉コレステロール(HDL)値を下げることもあり、病気につながる
といわれています。そのため、摂りすぎに注意する必要があります。適量の摂取を心がけることで解決できますね。
他に大豆油が危険とされる理由として、大豆油による大豆アレルギーの発症についてもいわれることがあります。
しかし、大豆油による大豆アレルギーの心配はほぼありません。大豆油の製造過程でアレルゲンとなるたんぱく質がほぼなくなるためです。とはいえ、アレルギーには個人差はあるため、必ず主治医の指示を得てから摂取するようにしてください。
参考:精神神経学雑誌|脳を襲う油(あぶら)-基礎研究から-
一般社団法人 日本植物油協会|第3回 「あぶら」よ、訴えなさい。
実は栄養豊富なんです
大豆油が危険と言われる理由と対処法をお伝えしてきましたが、大豆油は実は栄養豊富など、健康によい点もたくさんあります。
ビタミンKが豊富
大豆油にはビタミンKが豊富です。ビタミンKの役割は大きく次の2つ。
- 骨粗鬆症予防につながる
-
ビタミンKは丈夫な骨作りに欠かせません。ビタミンKはカルシウムを骨に沈着させて骨の形成を促します。
ビタミンKが不足すると骨折しやすくなります。食事からのビタミンK摂取量が少ない高齢者は、大腿骨頸部の骨折頻度が高まるという報告もあるのですよ。
骨粗鬆症の治療薬にビタミンKの一種のメナキノン-4が処方されるように、骨の健康とビタミンKは切っても切り離せない関係なのですね。
- 正常な血液凝固機能を維持する役割がある
-
ビタミンKには、血液凝固を助ける働きがあるため「止血のビタミン」と呼ばれることがあります。
ビタミンKが不足すると、肝臓で血液凝固因子が生成されにくくなり、出血が止まりにくくなります。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、ビタミンKの成人の1日の摂取目安量は男女ともに150μg。
多量に摂取しても健康被害は報告されておらず、上限量は設定されていません。大豆油だと100グラムあたり210μgのビタミンKが摂取できます。同じ量のオリーブ油の5倍量のビタミンKが含まれており、豊富さがわかりますね。
ビタミンKは脂溶性で熱に強いため、炒め物などの油に使うと効率的に摂取できますよ。大豆油のほか、ブロッコリーやモロヘイヤ、納豆などに多く含まれています。
健康な人が通常の生活を送っていてビタミンK不足になることは稀ですが、高齢者や肝障害のある人は、腸管からの吸収が悪くなり、不足することがあります。
高齢者、肝障害のある人、抗生物質を服用している人、骨粗鬆症のリスクが高い閉経後の女性などは、ビタミンKを多く含む食品を多めに摂取することが望ましいといわれています。
参考:公益財団法人長寿科学振興財団健康長寿ネット|ビタミンKの働きと1日の摂取量
ビタミンEも豊富
大豆油は、ビタミンEも豊富です。ビタミンEは脂溶性ビタミンであり、次の作用が期待されます。
- 抗酸化作用
-
体内の脂質の酸化を防ぎ、血管を健康に保ちます。具体的には、動脈硬化や血栓の予防、血圧低下などに効果があります。細胞の酸化を防ぐので、アンチエイジング効果が期待できますよ。
- 血行促進作用
-
血流を良くする働きがあるため、冷え性や肩こり、頭痛から体を守ります。
ビタミンEは、大豆油のほかに、アーモンドをはじめとするナッツ類やうなぎ、めかじきなどの魚介類に多く含まれています。サプリメントで過剰に摂取しない限り、食品からの過剰摂取による健康被害はないとされています。
参考:公益財団法人長寿科学振興財団健康長寿ネット|ビタミンEの働きと1日の摂取量
必須アミノ酸が豊富
大豆油には体内では作られず、食品から摂取する必要がある必須アミノ酸が豊富です。大豆油には、リノール酸以外にもオレイン酸やα-リノレン酸が豊富に含まれており、次の効果があります。
- 悪玉コレステロールを減少させる
-
悪玉コレステロールが減ると、動脈硬化や血栓予防、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが減るといわれています。
- 腸の働きを活性化させる
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便秘改善に効果があります。
- 血液の流れをスムーズにする
-
冷え性の改善や血栓予防などの効果があるといわれています。
必須アミノ酸は、運動をする人には特に積極的な摂取が必要だといわれています。良質なたんぱく質である肉・魚・大豆製品・乳製品に多く、大豆油にも多く含まれています。
【まとめ】大豆油を理解して適切に取り入れよう
いかがでしたか。
こちらの記事では、
- 大豆油が一部で危険、体に悪いと言われるのは、トランス脂肪酸や遺伝子組換え問題、オメガ6脂肪酸の特性によるものから。
- 溶剤抽出ではない製法の大豆油や遺伝子組み換えでない大豆を選ぶこと、大豆油の摂取量に気をつけることで解決できる。
- 大豆油自体はビタミンKやE、必須アミノ酸など栄養豊富。適量を取り入れることで、骨粗鬆症予防やアンチエイジングの効果が期待できる。
ということを紹介してきました。
骨の健康やアンチエイジングケアに関心のある方は、安全な大豆油を手に入れ、日々の食事に適量を取り入れてみてはいかがでしょうか。