日本人の生活にとって非常に身近な存在である大豆。しかし、その大豆生産の裏で、ブラジルの森林破壊が進んでいるという事実をご存知でしょうか?
この記事では、ブラジルの大豆問題の概要やその歴史的な背景、森林破壊の現状についてご紹介します。日本人がしょうゆや味噌、豆腐、豆乳といった様々な形で日常的に食べている大豆ですが、その裏にどんな環境問題があるのか関心がある方は参考にしてみてください。
ブラジルの大豆問題とは?
ブラジルの大豆問題とは、大豆生産のための耕作地の拡大でブラジルの貴重な森林や生態系が破壊されている問題です。セラード地帯には200万平方キロメートルに及ぶ広大な土地がありますが、その半分ほどの土地の自然が失われてしまったとされています。
日本だけでなく中国など、その他の国々で食用や飼料用として需要がある大豆。その大豆の生産には、広大な農地と農業用水を必要とします。大豆のニーズを満たすために農地を拡大することで、ブラジルの貴重な自然が失われつつあるのが現状です。
ブラジルの大豆問題の歴史や森林破壊について解説
ブラジルの大豆生産によって、ブラジルの貴重な森林や生態系が脅かされています。しかし、なぜブラジルで森林破壊の問題が深刻化するほど大豆生産が拡大したのでしょうか?
この章では、ブラジルの大豆問題の歴史や現状について詳しく見ていきましょう。
世界的に大豆のニーズは増加している
大豆のニーズは世界的に増えています。最も大きな要因は肉の需要の増加で、大豆の総生産量の約75%は家畜用の飼料として利用されています。中国を筆頭とする新興国における肉の需要の増加に伴い、世界的に大豆が必要とされているのです。
日本人にとっては意外なことかもしれませんが、食用大豆は約15%しか消費されておらず、他には燃料用に約5%、工業用に約5%というバランスで大豆が使用されています。
ブラジルには日本の約25倍という広大な領土があり、農業用耕作地が多いので、大豆やとうもろこしなどの穀物の生産能力が高く、順調に穀物の生産量を伸ばしています。
2019年〜2020年にはアメリカを抜いて世界第一の大豆の生産量を達成し、とうもろこしもアメリカに次ぐ世界第二位の生産量があり、その差は年々縮まりつつあるのが現状です。
日本の大豆ととうもろこしの輸入先1位はアメリカですが、アメリカに次ぐ2位はブラジルです。世界的な大豆のニーズを満たすために、ブラジル産の大豆生産は拡大しており、アメリカをしのぐほどの大豆やとうもろこしの生産大国となっています。
引用元
独立行政法人 農畜産業振興機構|ブラジルの大豆・トウモロコシをめぐる最近の情勢
森林破壊環の問題が深刻
ブラジルで大豆の生産が急速に進んでいる裏で、ブラジルの貴重なアマゾンの森林の伐採やモザイク状に広がる植生が特徴のセラードの乱開発が問題になっています。
ブラジルで急速に大豆生産が広がった背景は、ブラジルにおける農業技術の発達と急速な農地開拓。アマゾンに代表されるような手つかずの自然を切り拓くことで、耕作用農地を拡大してきました。
2000年〜2017年にかけてブラジルにおける大豆の生産量は10%増加しましたが、そのために推定で283万ヘクタールもの森林が破壊されたとも言われています。
大豆生産を可能にする新たな農耕技術の導入や耕作地の拡大を進めていく中で、森林伐採や生態系の破壊といった環境問題が報告されるようになったのです。
セラード地帯は「世界で最も生物多様性に富むサバンナ」という異名を持ち、オオアリクイやアメリカバク、オオアルマジロなど、ここでしか見られない固有生物も生息しています。
また、二酸化炭素を蓄える機構として機能しており、セラードの生態系が失われてしまうと、貴重な生態系や二酸化炭素の吸収先がなくなってしまうといった問題があります。
こうした問題を解決するために、持続可能な大豆生産を実現しようとする動きがブラジルで活発になってきています。ここからは、環境問題への取り組みについて確認しましょう。
引用元
持続的な大豆生産に向けた取り組み
現在のブラジルでは、セラード地帯200万平方キロメートルの内の約9%の土地しか保護されていません。
政府レベルでセラード地帯の生態系を保護していくために、環境保全団体などがブラジル政府に保護区の拡大を提言しています。また、不要な土地に植樹し、農業用地にできる限り樹木を植えていくことで、セラードの生態系を維持するような取り組みが行われています。
まとめ
この記事では、ブラジルの大豆生産の歴史や現状、環境問題について紹介しました。大豆は日本のみならず、あらゆる国で食用や飼料用として利用されている穀物です。
世界的な大豆のニーズを満たすために、ブラジルではアマゾンやセラード地帯の農地開発が進み、森林伐採や生態系の破壊といった環境問題が度々報告されています。
持続可能な大豆生産を実現するためには、農業と環境の調和や破壊されてしまった土地の再生に向けた取り組みが必要不可欠です。私たちが普段食べているブラジル産の大豆には、実は環境問題が密接に結びついているということを再認識しましょう。