大豆は健康に良い食品として広く知られており、特にたんぱく質が豊富です。ここで、大豆のたんぱく質の質を示す指標「アミノ酸スコア」に注目してみましょう。
アミノ酸スコアとは、一言でいうと「たんぱく質の栄養価を示す指標」です。
大豆のアミノ酸スコアは100と説明されたり86と説明されたりするため、どちらが正解なのだろうと思っている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、そもそもアミノ酸スコアとは何かを確認した上で、大豆のアミノ酸スコアは100なのか86なのか、なぜふたつの数値がいわれるのかについて解説していきますね。
【おさらい】アミノ酸スコアについて
まず、アミノ酸スコアとは何かの確認から始めましょう。
アミノ酸スコアとは、たんぱく質の栄養価を示す指標。
アミノ酸スコアは、食品に含まれる必須アミノ酸がどれくらい満たされているかで算出されます。
人間の体は必須アミノ酸を自ら生成することができず、食事から摂取する必要があります。必須アミノ酸は9つから組成されており、筋肉を作ったり体の免疫力を高めるなど生命の維持に必要な成分です。
一般的にアミノ酸スコアが100に近いほど、バランスのよい優れたたんぱく質とされます。
参考:日本食品分析センター|食品たんぱく質の栄養価としての 「アミノ酸スコア」2005
アミノ酸スコアのイメージを頭に描きたいときは、「樽(おけ)理論」が役立ちます。
画像引用元:国立長寿医療研究センター|良質なたんぱく質とは?
この理論では、桶を構成する板を必須アミノ酸に見立て、板の高さを各アミノ酸の割合に例えます。
桶を構成する板は9枚あり、9つの必須アミノ酸により桶が構成されているとイメージしましょう。
桶の容量(たんぱく質の質)は、最も低い板(最も低い必須アミノ酸)によって制限されます。この最も低い必須アミノ酸のことを、第一制限アミノ酸といいます。
摂取したたんぱく質を効率よく利用したければ、各アミノ酸がバランスよく含まれることが重要なのですね。
アミノ酸スコアが高い(100)食品はこちらです。100以上のアミノ酸スコアが算出されたときも、表記は100とされます。
食品 | アミノ酸スコア |
---|---|
牛・豚・鶏肉 | 100 |
魚(あじ、さんま、さけなど) | 100 |
牛乳 | 100 |
卵 | 100 |
大豆 | 100 |
ほとんどのプロテイン食品もアミノ酸100です。
大豆もアミノ酸スコアが100、豆腐、納豆、豆乳といった大豆加工品でもアミノ酸スコアは同じく100です。
大豆は、たんぱく質をバランスよく摂取できる栄養価の高い食品ということですね。
反対に、アミノ酸スコアが低い食品はこちらです。総じて穀類のスコアが低いですね。
食品 | アミノ酸スコア |
---|---|
精白米 | 93 |
中華麺(生) | 53 |
食パン | 51 |
アミノ酸スコアが低い食品を食べる際は「補足効果」に注目しましょう。
アミノ酸スコアの低い食品を食べるときは、不足している必須アミノ酸を多く含む食品を一緒に食べることで、たんぱく質の栄養価が改善されます。
食べ合わせを考えてバランスよく食事をすることで、栄養価を補えるというわけですね。
大豆のアミノ酸は100!嘘と言われる理由
大豆のアミノ酸スコアは100で間違いありません。
大豆のアミノ酸スコア100は嘘といわれることがありますが、それは、アミノ酸の評価方法が時間とともに変化してきたためです。
1973年にFAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が発表したアミノ酸評点パターンにより、大豆は86と算出されました。
しかし、その12年後の1985年には、FAO(国際連合食糧農業機関)、WHO(世界保健機関)に加えてUNU(国連大学)が新しいアミノ酸評点パターンを発表しました。
1985年の変更により、大豆のアミノ酸スコアは100に改定されたのです。
その後、1989年に、専門家によりたんぱく質の品質評価について検証が行われました。この検証でも1985年の変更が妥当であることが示されました。
このような経緯から、大豆のアミノ酸スコアは「100」と現在では考えられています。
参考:国立栄養研究所 山口迫夫| 栄養学雑 誌Vol.45 No.2 85~90(1987) |新しいアミノ酸スコアをめぐる問題
日本食品分析センター|食品たんぱく質の栄養価としての「アミノ酸スコア」2005
アミノ酸スコア86説とは?
アミノ酸スコアは100ですが、以前の86という数値に基づく情報も残っており、混乱を招くことがあります。
FAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が1973年に評価したスコアが86でした。
86だったのは、ラットを対象にした実験を行っていたことに起因します。
ラットで実験したため、人間の体への影響とは異なる結果が出たのです。
ラットは人間よりもはるかに多くのメチオニン(必須アミノ酸のひとつ)を必要とします。体毛の増加のためと考えられています。
ラットに多く必要とされているメチオニンは、大豆には動物性たんぱく質に食べて比較的少ないため、大豆の評価が低くなってしまいました。
このような過去の評価方法による情報が今でも残っていて、「大豆のアミノ酸スコア86説」があるというわけです。
参考:不二製油株式会社 |大豆たん白質 基本編 大豆たん白質は質の栄養価は牛乳・卵と同じ最高点
まとめ
大豆のアミノ酸スコアについて、100と86の両方の説がある理由を解説してきました。
- アミノ酸スコアとはたんぱく質の栄養価を示す指標であり、100に近いほどバランスのよい優れたたんぱく質といえる。
- 大豆のアミノ酸スコアは100で間違いない。
- 1973年の評価でアミノ酸スコアが86とされたため、今でも86と誤解されることがある。
- 86説の原因は、人体とは性質が違うラットで実験していたため。
ということがわかりました。
大豆は、牛肉などの動物性食品と変わらずアミノ酸は最高レベルの100。
バランスのとれた素晴らしいたんぱく源ですね。ぜひ大豆を積極的に摂取して健康な体を作っていきましょう!